“こあくましちへんげ”
作:眼帯兎
空には雲も無く、蒼い空には覗き穴のような太陽が光を漏らしている。
少し寒さを感じる風は、その中に微かな春の暖かさを匂わせていた。
そんな最高の天気だというのに、窓の無い図書館は今日も埃臭いかぎりです。
実際どうなのでしょうか、この管理体制というやつは。
本ばかり重視して使い魔への配慮がなっていません。
それ以上に、パチュリー様ご自身の身体に悪すぎるのです。
そんな最低環境の中、“私達”は今日もパチュリー様の為に働いています。
■ 月曜日
「パチュリー様、紅茶の用意が出来ました」
凛とした声が図書館に響き渡ります。
腰まで届く長髪を優雅に揺らしながら一礼をした後、後ろに控える。
我ながら完璧な使い魔っぷりと言えるでしょう。
パチュリー様はそっと本を閉じて、小悪魔***わたしに笑いかけました。
今日は中々の吉日と言えるでしょう、パチュリー様の笑顔に私も幸せそうです。
「小悪魔」
「いいえ、パチュリー様の為ですから……」
顔に朱を交えながら、最高の笑顔を浮べる小悪魔***わたし。
それとは対照的に、パチュリー様は無情にも告げるのです。
「カップを、もう一つ用意してちょうだい」
例えるなら、神社の柱が折れた様な擬音が図書館に響きました。
その発生源は勿論、私でした。
油の切れた車輪のように、嫌な音を立てて振向く表情は微笑みのようでした。
しかし、それは決して笑顔と呼べるものではありません。
「……レミリア様ですか?」
「いいえ」
「アリス様でしょうか」
「違うわ」
パチュリー様の返答に、私の笑顔のようなものが崩れていきます。
我ながらとても恐いです。アリス様が目にしたら泣きかねませんね、弱いですし。
「魔理沙……様ですか?」
「……ええ」
辛うじて様と付け加えた私の目は、赤い髪に隠れて見えません。
しかし、そこにはきっと殺意の篭った瞳が輝いていることでしょう。
パチュリー様はそれを気に留めることもなく、なんだか照れたように答えました。
私の殺意が五割り増しです。
“あの私”の名はエンヴィー。
七つの大罪と呼ばれる感情の一つ、嫉妬を基にした小悪魔***わたし。
司る惑星は月。故に彼女は月曜日にパチュリー様のお世話をします。
「あの女、私のパチュリー様をたぶらかすなんて……ぱちゅりーさま……あうぅ」
哀愁を漂わせながら、エンヴィーはカップを温めています。
その片手間に、楽しげに話す魔理沙さんを羨ましそうに見つめては、くすんといじけてみる。
嫉妬しながらも毒を盛るような様子も見せないのは、私らしいと言えるでしょう。
嫉妬の善性は貞節であり、あの私はパチュリー様の幸せを一番に考えているのです。
だからといって、魔理沙さんに遠慮する必要は無いと思うのですがね。
ちょっと可哀相なので、魔理沙さんの砂糖は塩に変えておきましょう、頑張れ私。
■ 火曜日
「……ほら」
そんな言葉と共に、ぶっきらぼうに紅茶が置かれます。
その先に座るパチュリー様は無言で頷き、気にした様子も見せません。
他の小悪魔***わたしと比べて、僅かに褐色を交えた肌は不機嫌そうに歪み、紅い瞳は扉を盗
み見ています。
私の視線の先には、冷笑を浮かべた咲夜様が立っていました。
その隣にはレミリア様がいらっしゃるのですが、パチュリー様の従者である私は気を使う様子を見せません。
短く切りそろえた髪を揺らしながら、私は咲夜様を睨み返していました。
咲夜様の瞳は語ります。下品、従者として失格ね。
私は睨み返して答えます。うるさいわ、この犬、ばか咲夜。
どう見ても私が劣勢です。というか咲夜様に勝てる従者が居るとは思えませんね。
それにしても、咲夜様はどうもあの私を苛めて楽しんでいる節があります。
以前も廊下で咲夜様が私をからかっているところを見かけました。趣味なのでしょうか。
“あの私”の名はラース。
全ての罪の元となる感情と定められた七つの感情の一つ、憤怒を基にした小悪魔***わたし。
司る惑星は火星。故に彼女は火曜日にパチュリー様の傍に置かれます。
「私がどうパチュリー様に接しようと、私の勝手でしょう!」
「そうかしら? おちびさんにはまだ分からないようね……」
くすくすと笑う咲夜様にラースは憤慨しています。
二人のご主人様は無関心で、お互いの話に没頭していました。
慣れたというよりは、最初から止める素振を見せないのが、このお二人らしいと言えるでしょう。
「ちびって言うな、まだ伸びるんだから!」
「そうかしら? 逆に縮んでいるように見えるのだけど」
憤怒の善性は勇気、咲夜様に立ち向かうのはある意味勇気とも言えるでしょう。
あ、私がとうとう泣いてしまいました。
「うるさい、ばか咲夜! パチュリーさまー……」
パチュリー様に縋りつきますが、頭を撫でられるだけで相手にされていません。
それにしても、ばか咲夜は我ながら頭悪すぎですね。
■ 水曜日
「ぱちゅりーさま、紅茶だよー。おやつの時間ですよー」
やたらと高い声と共に、幸せそうな吐息が吐かれます。
盆を手に、危うい足取りで走り寄る小悪魔***わたしの姿は、パチュリー様より頭一つ分小さい。
ラースと同じく短く切りそろえた髪には、パチュリー様とお揃いのリボンが巻きつけられています。
エンヴィーが虎視眈々と狙っているのは、言うまでも無いでしょう。
「今日はね、シフォンケーキだよー」
「……そう」
「早く食べよ?」
ちゃっかり二人分用意されたティーセットの対面で、パチュリー様は溜息と共に本を手放します。
私は満足そうにそれを見届けると、手を合わせて無邪気に頂きますと声を上げた。
そこからは壮絶の一言に尽きます。
ホールで用意されたシフォンケーキは、次々にその身を削られ、食されていきました。
パチュリー様は一切れで充分なのか、私の姿を前にケーキをとろうと思わないのか、紅茶をゆっくりと飲み干します。
私はケーキを頬張る度に満面の笑みを浮べ、速度を緩めることなくそれを消化していきます。
我ながら凄い食べっぷり、見ていて壮観といえるでしょう。
動きは限りなくスロー、子供らしく量もそれほど食べられないように見えます。
しかし、その動作は目の前のケーキが消えるまで、永遠に続きます。
ホールのケーキなどつまみと言わんばかりに間食した彼女は、それでも足りないのかパチュリー様へと目を向けます。
同時に、パチュリー様の溜息が二度目の出番を迎えました。
私はその姿に笑みを浮べ、足早にパチュリー様へと近づいていきます。
「……はい」
「えへへ、あーん」
大きく開かれた私の口に、パチュリー様のフォークがケーキを運びびます。
そして、盆からナプキンを取って、私の汚れた口元をそっと拭ってあげました。
仕方がないといった風に微笑むパチュリー様、やはりお優しいです。
「……お邪魔します」
ご馳走様でしたと手を合わせる二人、その前に黒い影があらわれました。
今日は水曜日なので必ず訪れる人物が居るのです。
「あ、ありすだー」
「いらっしゃい」
手にバスケットを抱えた姿は、魔導図書館にはあまりにも似つかわしくありません。
その顔に蕩けるような笑顔を浮かべていたら尚更といえるでしょう。
パチュリー様も友人の姿に呆れたようで、あまり目を合わせないようにしています。
「残念だわ、少し早ければティータイムに間に合ったのだけれど」
「いいえ、お構いなく」
「小悪魔、アリスにお茶を」
満腹笑顔で私は元気に返事をして、厨房へと走っていきます。
それを見送りながらも、アリスさんはとても幸せそうに微笑んでいました。
しかし、犯罪者のような危うい瞳は、見ていて少し気持ちが悪いです。
「それで、今日は……」
「いつも通りの、研究よ」
ランチバスケットを持ってでしょうか。
当たり前のように答えるアリスさんは、もはや痴呆症の老人のように見えます。
そこへ、私が戻ってきました。やはり危なっかしい足取りでテーブルへ向います。
「ありがとう」
「うん!」
そして、私の目線はアリスさんのランチバスケットへ向います。
アリスさんは予想していたかのように、私の前にランチバスケットを置きました。
何となく優しいお姉さんのように見えますが、鼻血が出ているのでファールです。
「わぁ、クッキーだ」
またも満面の笑みを浮かべる私。まだ食べる気なのでしょうか。
その瞳は、アリスさんへと何かを訴えかけるように輝いています。
アリスさんは嬉しそうに、私へと頷きました。
“あの私”の名はグラトニー。
七つの大罪の一つである大食を基にした小悪魔***わたし。
司る惑星は水星。故に彼女は水曜日にパチュリー様の傍で笑っています。
グラトニーには、もう一人餌付けを行う人物が居ます。
先ほどから見ないふりをしていたのですが、もはや限界でしょう。
本棚の影、満面の笑みと共にグラトニーへと熱視線を送る白い影。
「小悪魔、フランドール様のおやつを作りすぎてしまって……」
「たべるー!」
返答所要時間は一秒を必要としません。
クッキーの食べかすをつけながらも、咲夜様へと微笑んでいます。
「小悪魔、食べかすがついているわ」
「……あ」
アリスさんがそれを掬い取り、嬉しそうに口に含みました。
グラトニーは、恥ずかしそうにはにかんでいますが、犯罪だと思います。
このように、グラトニーは色々な人物に人気があるようです。
パチュリー様も、このグラトニーを気に入っている節があります。
大食の善性は知恵。難しい言葉をまともに理解できるグラトニーは、よくパチュリー様と話しています。
そこだけは、少し羨ましいですね。
因みに、悪魔は太らないらしいです。
■ 木曜日
「お茶が入りましたわ」
優雅な動きで、音も無くティーカップが置かれます。
しかし、パチュリー様はそれに気付く素振も見せず、本に没頭しているようでした。
「……パチュリー、お茶が入りましたと言ってますのよ?」
声は穏やかに、しかし微かに険のある音質で響きます。
我ながら無礼ですね、あと様を付けてほしいですね。
「……置いて」
「温かいうちに飲まないと、味が落ちてしまいますわ」
小悪魔***わたしは呆れたようにパチュリー様へ視線を向けます。
手入れの行き届いた長い髪を優雅に揺らしながら、控えめな胸を張って私はパチュリー様を見下ろしていました。
パチュリー様は寛大な心をお持ちなので気にしていないようですが、今すぐ出て行って粛正してやりたい気分です。
無言の応酬が五分ほど続いて、パチュリー様は無言でカップに手を伸ばしました。
私は満足したように笑って、最高の物は最高の内に頂くのですと言っていました。
主人であるパチュリー様に対して、何という態度でしょう。傲慢にも程があります。
“あの私”の名はプライド。
七つの大罪の一つである傲慢を基にした小悪魔***わたし。
司る惑星は木星。故に彼女は木曜日にパチュリー様に奉仕しています。
「……小悪魔」
「なんですの?」
「ありがとう、美味しいわ」
あぁ、パチュリー様は何とお優しいのでしょうか。
労いの言葉と共にそんな極上の笑顔を下さいます。
だというのに、プライドは何も言わず固まっていました。
その瞳は見開かれ、陶器のように白い肌が朱に染まっていきます。
「と、当然ですわ……パチュリーは、私のご主人様ですもの」
プライドの視線はパチュリー様へと向くことはなく、忙しく図書館の中を彷徨っています。
私はプライドのことをあまり気に入っていないのですが、こういう所だけは好感をもてます。
「さぁ、パチュリー。読書もそろそろお止めになって、身体を壊しますわ」
傲慢の善性は忠実。プライドはどんな事があっても、パチュリー様を裏切りません。
何よりもパチュリー様を優先し、重んじています。
ただ、様を付けろと何度も言っているのですが、それがプライドの性質では変えようがありません。
やはり、私は苦手です。
■ 金曜日
「や、止めてください」
図書館にそんな言葉が響きます。
普段ならメイド達が侵入者の迎撃に向うのですが、今日ばかりは誰もが関心を持ちません。
それは、犯人が内部の者であり、被害者は毎回同じ人物だからなのです。
「アリスさん、なんで逃げるんですかぁ?」
「触らないでー!」
鼻にかかった、蕩けるような甘い声に、怯え戸惑うアリスさんの悲鳴が交差しました。
じりじりと後退するアリスさんに、赤い影がゆっくりと詰め寄って行きます。
長髪は蛇のようにうねり、蠱惑的な肢体が獲物を狙うかのように蠢いていました。
「ほら、アリスさん。図書室ではお静かに、しっぽりとね?」
「しっぽりって何よ!」
朱を交えた頬にいやらしい笑みを浮かべた小悪魔***わたしが、アリスさんへと手を伸ばしました。
アリスさんはキャアキャアと泣き叫び、そのたびに埃が舞います。
煩い訪問者に、パチュリー様の眉が僅かに釣りあがっていました。
この騒音がアリスさんでなければ、とっくにスペルカードが発動しているところでしょう。
「ほら、すぐ済むから……目を閉じてください」
眼前に迫った私の指が、アリスさんの首筋を撫で上げます。
アリスさんはびくりと背筋を浮かすと、赤面して顔を背けてしまいました。
その顔を、私の手がゆっくりと正面を向かせます。
そして、その唇を――。
「……うるさい」
紙の束だというのに、まるで鉄球が肉を叩き潰したような音が響きました。
その斜線上にいた私が、糸の切れた人形のように崩れ落ちていきます。
大丈夫でしょうか、私。
「パチュリー……助かったわ」
「金曜日に来るなんて、珍しいわね」
金曜日の図書館にアリスさんが訪れることは滅多にありません。
その理由は、現在アリスさんの足元で気絶している私に原因があります。
「どうしても必要な資料があったの――キャア!」
再びアリスさんの悲鳴が図書館に響き渡りました。
眉を潜めたパチュリー様の眼下、気絶していたはずの私がアリスさんのスカートを弄っていました。
大きな溜息と悲鳴が図書館に木霊します。
「小悪魔、アリスから離れなさい」
「や、パチュリー様踏まないでください、少し気持ちいいです!」
「やぁぁぁああ!」
正に地獄絵図と言いましょうか、混沌としたやり取りが図書館で行われています。
結局、二度目の撲殺音と共に、私はその愚行を停止しました。
“あの私”の名はラスト。
七つの大罪の一つである色欲を基にした小悪魔***わたし。
司る惑星は金星。故に彼女は金曜日にパチュリー様の傍で何かを誘惑しています。
「ふぅ、パチュリー様の愛は痛くて、私の身体は持ちそうもありません」
「……そう」
「冷たいですね、ちょっと感じてしまいそうです」
何事も無かったかのように、ラストはパチュリー様の傍らに控えていました。
アリスさんはラストから必要以上の間を空けて、遠目に怯えの色を覗かせています。
ラストは何故か、アリスさんを気に入っているようです。恐らく苛めやすいからでしょう。
「お茶が入りましたよ。さぁ、アリスさんもどうぞ」
「ど、どうも……」
無言のパチュリー様と怯えるアリスさんに、ラストからティーカップが差し出されます。
先の乱痴騒ぎで疲れたのか、アリス様は疑いも無くカップに口をつけていました。
「少し高級なものですが、美味しいですか?」
「あ、はい。とっても美味しいです」
「高級な媚薬入りですよ」
瞬間、アリスさんの口から水飛沫が舞います。汚いですね。
因みにパチュリー様は、決してカップに口を付けようとはしていません。
「……アリスさん」
「な、なんでしょうか」
「少しお加減がよろしくないようですね……ちゃんと睡眠をとっていますか?」
「最近は研究が忙しくって」
狼狽しつつ答えるアリスさんに、ラストは眉を潜めていました。
そして、人差し指をピンと立てて、叱るように目を細めます。
「駄目ですよ、血の味が落ちます!」
「飲む気なの!?」
アリスさんは目にも留まらぬ速度で、パチュリー様の影に隠れてしまいました。
怯えて震えるその姿は、どこか小動物のような印象を覚えます。
「……小悪魔」
「はい、パチュリー様」
「下がっていなさい、アリスと話が出来ないわ」
「……残念。アリスさん次こそは堕としちゃいますからね」
それではと一礼をして、ラストは影へと消えていきます。
アリスさんは安堵の溜息を吐き、ようやくパチュリー様と魔術のお話を始めたようです。
色欲の善性は愛情。ラストの愛は分け隔てなく向けられますが、節操が無いようにも見えますね。
一つ一つの愛が真実である故に傍迷惑な特性です。
本当に善性であるのか疑わしいですね。
■ 土曜日
「パチュリー様、この文字はどういう意味なんですか?」
静寂を保っていた図書館に、呟くような声がそっと聞こえます。
パチュリー様は微笑みと共に、本から目を上げると、小悪魔***わたしへと向き直りました。
「今度はどれかしら?」
「これです、この行の……これ」
仲の良い姉妹のように顔を近づけて、パチュリー様は私に本の知識を与えていました。
我が事ながら、少し羨ましく思えます。
「これ、珍しいのかな?」
「そうね、希少な存在だもの」
「……欲しいな」
私の目は遠くを見つめながらも、妖しく輝いていました。
恐らく私は、あの本に載っていた何かを探し続けるでしょう。
そして、手に入れたらまた新しい何かを探すのです。
「ねぇ、パチュリー様。こっちの奴は何?」
目移りし続ける私の心は、果てなく何かを求めていました。
パチュリー様は飽きもせず、そんな私に知識を与えてくださいます。
それでも、私は満足することなく、 短い髪を揺らしながら、小さな胸に無限の欲望を抱えていました。
“あの私”の名はグリード。
七つの大罪の一つである貪欲を基にした小悪魔***わたし。
司る惑星は土星。故に彼女は土曜日にパチュリー様の傍で何かを欲しています。
「お茶が欲しくなっちゃった、パチュリー様も飲みますか?」
「……お願いするわ」
パチュリー様は知識を求める純粋なものに優しいです。
だから、グリードの欲する知識を与えてくれる、満たしてくださる。
ただ、グリードは様々な知識を得ましたが、グラトニーに口論で勝てたことがありません。
パチュリー様が言うには、欲する力が強くとも、何かを得る力は大食に勝てないそうです。
それでもグリードは、何かを欲し続けて、得続けるのでしょう。
しかし、善性に慎重という特性を持つグリードは、力で何かを得ようとはしません。
「ねぇ、アリス。私これが欲しいの、持ってない?」
ただ、利用できる物は何でも利用するようです。
それと、全く関係無いのですが、アリスさんはよく図書館に訪れます。
■ 日曜日
図書館には本が読める程度の明かりだけが灯り、本の捲られる音だけが響いている。
今日、パチュリー様の傍らに小悪魔***わたしの姿は見えない。
日曜日は、実質的な私の休養日と言えます。
「……ぱちゅりーさま」
読書の音は止まらず、声の後には寝息が零れていました。
パチュリー様の座るテーブルの対面に、眠り続ける小さな私の姿があります。
むにゃむにゃと寝言を繰り返す私を、パチュリー様は気にした様子も無く、本を読み進めています。
しかし、眠る私の上には毛布が掛けられていました。
“あの私”の名はスロウス。
七つの大罪の一つである怠惰を基にした小悪魔***わたし。
司る惑星は太陽。故に彼女は日曜日にパチュリー様の傍で眠り続ける。
「……あ」
落ちた毛布を拾い上げたパチュリー様が、小さく声を上げました。
うっすらと目を開いた私が、パチュリー様を見上げています。
「……ぱちゅりーさま、おはよう……ございます」
「おはよう、小悪魔」
「おちゃ……を?」
のっそりと、緩慢な動きで立ち上がろうとする私を、パチュリー様は手で制します。
私は素直に頷いて、怠惰な道へと引き返して眠りへと堕ちていきました。
「……一週間お疲れ様」
パチュリー様は私の額に小さくキスをして、優しく髪に指を通してくださいます。
私は気持ち良さそうに、寝息をたてているだけでした。
怠惰の善性は希望。今日は少し休んで、また明日からパチュリー様の為に働きましょう。
おやすみなさい、私。
了
■作者からのメッセージ
月曜日は少しやきもち妬きなのノーマル小悪魔
火曜日は元気の良いボーイッシュな小悪魔。
水曜日は食いしん坊なロリ小悪魔
木曜日はツンデレ混じりのお嬢様な小悪魔
金曜日はお色気たっぷりのサキュバス小悪魔
土曜日はパチュリーと仲良しで本の虫な眼鏡小悪魔
日曜日は寝言でむにゅむにゅ言ってる寝坊助な小悪魔
■
友人が「小悪魔は七人くらい居る」と馬鹿なことを言っていたので思わず書きました。
あれですね、小悪魔はなんか、ロリっぽいのとかお姉さんっぽいのとか不安定ですね。
……何が書きたかったのだろう。
相変わらずオチがありません。
少しでも小悪魔が可愛くかけていたら幸いです。
ごめんなさい。
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