“おまえあたまいいな。”

作:眼帯兎






『秘密』  それは小さな秘密、叶うか分からぬ小さな秘密。  小さな身体の恋娘、小さな氷精恋娘。  その身体には大きすぎる恋心、相手も分からぬ恋心。  その秘密が届くのは、表さぬ内は二分の一。  小さな秘密のシュレーディンガー。 「ぶんぶん、あのね」 「はい? どうかしましたか、チルノさん」 「――大好き!」  開けたら猫は死ぬもので。  黒い翼の猫さん、鼻血噴出し死にました。 『密室』  それは完全なる密室、開くこと叶わぬ密室。  ノックをしても返事は無い、中に閉じこもる人物は、果たして生きているのだろうか。  もしも、その密室を開けたのなら、彼女は何を目にするのだろう。  開かぬうちはどんなことも起こり得る。  完全なる密室のシュレーディンガー。 「咲夜さん、入りますよー」 「着替え中」  開けたら猫は殺されて。  龍の猫さん、完全瀟洒な密室殺人。 『残り物』『糸』  それは危険な残り物、古くて微妙な残り物。  匂いに異常はありません、色に異常はありません。  空腹巫女に残り物、地獄に落とされた糸は天へ続くか奈落へ続くか。  試さなければどちらも分からぬ。  空腹と残り物のシュレーディンガー。 「……腐っても鯛」  試せば猫は死んでいた。  それでも平気な紅白の猫、そんな彼女は無重力。 『旅』『一瞬』  それは久しく楽しい旅、未知の場所へと続く旅。  主を見限り行き着く先は、未知の道なる闇の中。  風の吹くまま先は分からぬ。  半分幽霊のシュレーディンガー。 「あら妖夢、何処に行く気だったの?」  開ける前から猫は死んでいた。  聡明主に仕える子猫、一瞬でさえ逃げることなど叶わない。 『うた』『60』  それはうた、六十に一度の循環に送られるうた。  罪を吸う紫の桜へと、慈悲深い閻魔が私事として送るうた。  それが届くかは分からない、裁きの時まで彼らの罪は不確定。  閻魔の捧げるシュレーディンガー。 「うぅ……優しいのは分かるけど、あの音痴はどうにかしてもらいたいねぇ」  それでも猫は生きていた。  少し音痴な擦れ声の猫、歌は心と巧く言う。 『幻』『夢』  それは儚い幻、誰かが触れれば壊れる幻。  容を得た幻は、魅入る者を離さぬ幻想と成る。  それは果たして夢か幻か。  少女と人形のシュレーディンガー。 「魔理沙、あなたを永久に離さない……」  死んだ猫さえ生きて見えた。  大きな人形抱いた猫、夢幻を愛して独りで眠る。 『遊び』『業』  それは深き業の遊び、無知な少女の無垢なる遊び。  永久に続くことはない、遊びの時間。  広がる紅のその意味は。   狂気の少女のシュレーディンガー。 「あぁ、もう壊れちゃったの?」  無垢な心は猫の死を知ろうとしない。  完全なる無知に狂う猫、背負うべき業さえ教わることはない。 『雨』『空』  それは優しく残酷な雨空、静かに永久に止まない雨空。  止むか止まぬか分からぬ雨、上がらぬ内は外には出れない。  開ける前から止まないことを知っている。  紅の娘のシュレーディンガー。 「妹様ー、おやつの時間ですよ」 「――美鈴?」 「はい、月も綺麗ですし、お嬢様とテラスで食べましょうね」  微かに猫は生きていた。  晴れた夜空に笑顔の子猫、小さな箱から抜け出した。 『鏡』『目』  それは古くて小さな鏡、己を映さぬ不思議な鏡。  自身から生れ落ちたその姿、似通うこと無きその姿。  救うことなどできない、ただその目で見守るだけだ。  この先永くを行く娘、今は孤独な我が娘。  子を想う母のシュレーディンガー。 「アリスちゃん、誰なの! その黒いのは誰なのよっ!」 「神綺様、仕事が溜まっているのですが――」 「女同士なんて不潔だわ! ママ許さないんだからっ!」 「――いいから働いてください!」  未だ開かぬ箱の猫、きっと生きてるその姿。  子離れできない母親猫、箱が開く時を待っている。 『一』『手紙』  それは一つの手紙、永遠を敵対する者からの手紙。  開かねば込められた思いは分からない、伝わることすらない。  それを開き何を想うのか、開けるかさえ分からない不確定。  二度はない一つの手紙の生死はどちらか。  姫と蓬莱のシュレーディンガー。  “ばーか。  by妹紅”  猫のいない箱の中、生死さえもそこにはない。  永久を生き続けた猫、今日もお前の死で満干全席だ。 『箱』  それは中身の定まらない不確定な世界。  その手で開き、観測した時初めてカタチを成す世界。  中身は生きているのか、死んでいるのか。  あなたの手にしたシュレーディンガー。 「とりあえず橙でも入れましょうか」 「――やめてください紫様!」  猫の生死はあなたが決める。  全てのことは箱の中。 了


■ 東方SSコンペ企画・運営スレ3 892 名前: 名前が無い程度の能力 投稿日: 2006/09/14(木) 10:57:29 [ yeDMwv66 ]  いいこと思いついた、お題候補が全部入った作品を書けばいいんだ  御免、多分無理 893 名前: 名前が無い程度の能力 投稿日: 2006/09/14(木) 15:30:58 [ HIlk492I ]  >>892  おまえあたまいいな ■本作は第三回東方SSコンペの投稿作品です。



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