“喜劇。”

作:眼帯兎






 私には好きな妖怪がいる。  私には好きな人間がいる。  彼女の為ならどんなこともしてみせる。  彼女の為ならどんなことでもできる。  でも、私が抱いてる好意を彼女は気づいていない。  でも、私のことを彼女は好いてくれていない。  こんなにも一緒に居るのに。  こんなにも好きなのに。  暗い図書館で、私の瞳はパチュリーを映している。  暗い図書館で、私の瞳は魔理沙を眺めている。  彼女は私の真剣な話を笑ってみせた。  彼女は楽しそうに話をしている。  私は想い人への気持ちを相談していた。  私は偶然その場に居合わせてしまった。  パチュリーはそっぽを向いてまだ笑い続けている。  パチュリーがこっちに気づいて笑みを浮かべた。  腹を立てて帰ろうとする私をパチュリーが引き止める。  居た堪れなくなって私は逃げ出してしまった。 「好きなら早く伝えなさい。人間の命なんて私達にとっては短いんだから」 「……分かってるぜ」  私はアリスが好きだ。  私は魔理沙が好きだ。  アリスが好きな奴を、私は知らない。  魔理沙が好きな人を、私は知ってしまった。  だから、破れるかもしれない恋心を抱きながら。  だから、破れてしまった恋心を抱きながら。  明日、私はアリスにこの思いを伝えようと思っている。  明日、私は魔界へと帰ろうと思っている。  ようやく、自分の恋心に気づいたのだから。  ようやく、この世界の未練を亡くしたのだから。  次の日、アリスの家には既に誰も居なかった。 了


■作者からのメッセージ  同日同時刻、霧雨家に一人の少女と大量の人形が引っ越してきた。  そんな、本当に馬鹿らしい 喜劇。  くだらぬ喜劇が嫌いな貴方はこのあとがきを忘れてもう一度読み直してください。  小さな恋慕を抱いた司書の姿を思い出しながら。  喜劇の裏に顔を潜める“くだらない悲劇”が顔を覗かせるでしょう。



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