“新しい夜。”

作:Fimeria






 閉じた目蓋が赤く染まる。
 ジリジリと熱を感じて、薄く眼を開くと、窓から朝焼けが見えた。
 赤というよりは黄色に近いそれを見て、眩しく思いながらも目を離せない。
 無言のまま、赤く染まってきた肌を無視して、日の出る姿を見つめ続けた。

「もう朝か……どうも、深く思い出しすぎた」

 朝焼けは次第に白雲へと変わっていった。これならば、今日は晴れが続く、満月もよく見えるだろう。
 思いながら、私は一つ伸びをした。
 あの夜から、輝夜の顔はあまり見ない。それでも、刺客だけは送ってくるから性質が悪い。
 それでも、最近は退屈しなくていいかなと思っていた。
 さぁ、夜も明けたのだから、一眠りして夜に備えよう。
 日が昇るのならば、当然夜も来るのだから。


 一眠りすると、過去に放心していた意識も戻り、赤く腫れた肌も、今は白く戻っていた。
 空は蒼が滲み始めて、今にも金色の満月が顔を出す頃合だ。

「晴れたな」

 一人呟いて、竹林を一人、浮遊し始める。
 空に浮んだ月は、一つ気前の不自然なものとは違い、慣れ親しんだ色をしていた。
 その色を見て思い浮かべるのは、やはり、あの憎い姫の姿だ。
 最近は顔さえ見ていない、見たくもないし、見たら殺すだろう。
 それでも、何となく物足りなく感じていることに、私は気づいていた。

「今思うと、永遠に暇を潰せるのはあれくらいだったのか」

 それならば、退屈で壊れなかったのは、あいつのおかげなのかもしれない。
 永琳があの夜に言った言葉。姫の御心、解りたくもない。

「さぁ、今日のお客は嫌に大勢みたいだな」

 目の前で漂う、二つの人影。
 一つは紅白、不思議で馬鹿げた空飛ぶ巫女装束。
 二つは妖怪、妖しい怪しい、胡散臭い日傘の女妖。
 けして相容れないような二人が、仲良く喧嘩して、何かを探していた。
 その姿に、何故か輝夜と自分が重なる。
 仲良くなんて、気味が悪くて吐きそうだった。


「こんな夜に出かける馬鹿者も居るんだねぇ」

 今日の暇潰しはこいつらだろう。こんな月夜に出歩く馬鹿はそうとしか思えない。
 お客様はいつになく面白い、これはきっと暇の潰し甲斐のある夜になりそうだ。

「お望みどおり。貴方達の肝、試させて貰うわよ。」




 生きているってなんて素晴らしいんだろう。






 了



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