“うそつきの退屈。”

作:眼帯兎




 古くより長寿とされ、人間の敵で在り続ける存在。  多くのものは不死、またはそれに準ずるものが多く、人間よりも強靭な肉体を持つ。  そして、それを死に至らしめるものは少ない。  しかし、確かに存在するのだ。 「……退屈」  現に、一匹の妖怪が今、退屈に食い潰されて床に伏していた。  精神的な作用に滅法弱い性質故に、退屈は妖怪を殺すに足る精神毒となる。 「兎は退屈だと死ぬかもしれないわねー」 ――かは定かではないが。  因幡てゐはともかく退屈で、畳の敷き詰められた大広間に一人、大の字となって倒れていた。  見上げた天井は古臭く、煤の染みを数などとうに数え終えてしまっている。  嗅ぎ慣れた和室特有の畳と古い木の香り、永遠を約束して停滞した空間。  その全てが変わりなく、退屈が溢れんばかりに沸いて出る。  故に、普段は囲炉裏に放り込まれる天狗新聞に手を伸ばす程度には、てゐは退屈に支配されていた。 「妖怪の山に新たな神社、博麗の巫女の生活危うし……」  ぴくりと一つ、大きな耳が外側に跳ねた。  続く記事に目を通しつつ、てゐの脳裏に様々な光景が浮かんでは消える。  昔から閉鎖的で、部外者には厳しく、中には楽園があるとさえ謳われた妖怪の山。  そこに噂話は絶えず、曰く人知を超えた技術が眠り、結界の綻びから外へも繋がっているという。  普段は警戒も厳しく、様々な人妖が調査に赴くも総じて収穫は無し。 「ああ、何て素敵なんでしょう」  信憑性皆無、退屈、価値無し、迷惑。  そんな天狗新聞の記者に、てゐはキスを送りたい気分だった。  何故ならこの記事は、てゐを退屈から解き放つのに充分なものであったから。  ずっと待ち望んでいた事が、そこにはあったのだから。 「ああ、何て素敵なんでしょう」  とりあえず、大事なことだからもう一度言っておいた。




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